田原凌祐の鍵盤弾き語り日記

広島県出身20歳、キーボード弾き語りシンガーソングライターが未だに青春してる10の理由

『Post-it』 ライナーノーツ

3rd SINGLE『Post it』に収録されている全10曲を一曲一曲紐解いていくライナーノーツを公開

 

※CDについての詳しい話は前回のブログから

『Post-it』 トレーラー映像を公開 - 田原凌祐の鍵盤弾き語り日記

 

01. 希う
2017年の一番最初に書いた曲です。「希う」とは強く切望するという意味です。自分がどんな人間かとか、どんな道のりを歩いて来たかとか、それをどんなに誰かに伝えようとしても殆ど伝える事は出来ません。相手の事をどれだけ分かろうとしたって、どれだけ話してもらったって、全てを知る事なんて到底出来ません。それが凄くもどかしくて、悔しいと感じたのがこの曲を書くきっかけでした。でも例えば握った手の強さだったり、僕だったら一曲歌を歌ってみたり、想いを表す方法はいくらでもあって、それだけで十分に言葉を超えていけるしその方が時間が凝縮されてるなって。その事に気付いた時、一気に空がひらけました。伝える事の出来ない生きて来た時間の隠喩として、人間の寿命と同じ蜜柑の木を用いています。

02. Whatever
壮大なロックバラードを制作したいと思い、詞やメロディーも洋楽のニュアンスを取り入れたいなと思って制作しました。洋楽のリリックは基本的にストーリーではありません。意味じゃなくてフレーズの美しさやカッコよさでグッとさせられます。だから言葉の羅列も入れ替えて、日本語詞とは違う英語詞の雰囲気を意識しました。ちょうどこの時、東京国際映画祭に行ったのもあって、そこからのインプットも曲に活かされています。「僕と君」というふたりだけの世界というものに特化して作ったので、大切な誰かを想って聴いてほしいです。 

03. ランナーズハイ
湘南国際マラソンのテーマ曲として作りました。「42.195kmの距離」と「過去から未来までの時間」を重ね合わせています。同じ距離を走ったってそれぞれのタイムや疲労があるように、生きている時間も人それぞれの道のりがあります。どれだけ前と差をつけられて一人のレースが続いても、その人にはその人なりの秘めた想いだったり、自分を変えてやるんだっていう熱意だったりがあるはずです。結局は他人じゃなくて自分自身。努力も嘘も優しさも強さも、誰かが見てなくたって全て過去が知っています。

04. remember to forget
「Good-bye Good-bye Good-bye」の部分が最初に降りてきて、ここから膨らませた結果、青春時代の恋愛を懐かしむような曲になりました。自分の高校時代をモチーフにしています。この曲の主人公は歌詞からも分かるように恋愛がとても不器用な奴です。「出会わなくても出会えたよ」というフレーズを書いた時に自分でも意味が分からなくて、繋がるような他な言葉も沢山浮かんだけど、この響きが妙にしっくり来てこのままにしました。ここからインプットを受けて、『remember to forget』という”忘れる事を覚えておく”という言葉遊び的なタイトルを後付けしました。10回近く転調もしてて、コード進行にかなり苦労しました。

05. 9番
2017年2月8日、私立恵比寿中学松野莉奈さんが18歳の若さでこの世を去りました。9番というのは彼女のエビ中の出席番号です。エビ中楽曲『手をつなごう』で彼女のパートに“生きてることの喜び 今忘れちゃいけない“という歌詞があります。そして昔、雑誌の取材で「生まれ変わったら何になりたい?」という質問に「また自分になりたい」と答えた事があります。特にこのふたつを曲を書くうえでのレールにしました。いつもみたいに捻ったりするのは出来るだけ抑えて、最後の締めくくりに関してはかなり時間を掛けたけど、これほどシンプルな言葉を超えるものは他にありませんでした。「失って初めて気付く」とよく言うけど、僕も大切な人を3年前に亡くしています。失った悲しみからどうやって立ち上がって歩いていけばいいか、その時の気持ちも振り返りながら作りました。

06. パブリックメディア
偏った報道、真実を捻じ曲げるメディア、それを鵜呑みにする世間。この汚れた関係をパブリックメディアというタイトルに込めました。間違った報道に対しては当然腹が立ちます。しかし騒ぎ立てるパブリックメディアに対しては、どんな言葉も熱意も通用しません。このやるせなさと苛立ちをどうやって押し退けるか、、、。それは同じように腹が立ってる者同士で繋がる事です。自分達が正しいんだと自信を持って、相手にもせずに冷ややかな目を向けておく事です。周りがとやかく言おうと、繋がってる者同士が繋がっていればそれでいい。強い言葉を詰め込んでいる分、重くならないようにBPMを速くして軽快に仕上げました。

07. 彼方
犬や猫の殺処分数は年に約13万頭。人間の身勝手な都合で愛護センターに運ばれ、いくつもの命が失われています。この現実を何かしら訴える歌は作れないだろうかと思って、でも直接的になるのは言葉の使い手ではありません。また別角度から動物の命の重さを切り取ろうと思って、子犬を拾ってくるという形にしました。主人公の心の状況とその子犬の心の状況を重ね合わせる事で、拾ってきた事を回想として描く事が出来ました。主人公とペットの愛情の部分で、この問題を考える脳を刺激できたらなと。アメリカの19世紀の女性作家が「雲の向こうは、いつも青空」という言葉を残しています。この曲では雨の日に出会ったというのが伏線になっているので、その言葉からヒントをもらって『彼方』というタイトルを付けました。

08. 風船が割れた日
『風船が割れた日』というタイトルは変換したら「欲望の爆発」といった意味合いです。ストレスが溜まりに溜まってコントロール出来なくなり、「もうどうにでもなってしまえ」って全てを投げ出したくなるような事って誰でもあると思います。この曲はその気持ちをひとつの視点から書いてみました。想いを縁取りするくらいに大事に温めて来た恋愛があって、正式に付き合うこともなく付き合ってるようなまま別れた二人。やっぱりそうやって恋愛をしている時っていうのは盲目になってて、多少の風当たりも気付かないくらい強く進んでいける訳です。でもそれをなくして、現実にぶち当たってもういっぱいいっぱいになって。主人公は柄にもなく、あんなに温めて来た時間も切りさってしまうほどに、当時のその子とベッドに溺れてしまいたいと思うのです。歌詞を書き終えた時はお蔵入りだなと思ったけど、アレンジまで終えてこのCDのカップリング曲で一推しの曲になりました。

09. 宇宙エレベーター
僕はタイトルを歌詞中で使う事が年に1回あるかないかくらいで、これも一切使わずに表現していくつもりでした。でもメロディーと綺麗にそのフレーズが重なったから下手に弄らない方がいいやと思って、とにかくその「宇宙エレベーター」と歌う所の心地よさの為に作ったみたいな所が大きいです。あとはタイトルに寄せて、テクノサウンドでエレクトロドラムを使ったアレンジにしました。「宇宙」と聞いて僕がパッと思うのは、果てしなくて解放感に溢れた感じ。だから色んな辛い事や悲しい事も宇宙に解き放つイメージというか、とにかく感覚で聴くような楽曲です。現実が押し寄せるから、みんな心でファンタジーを作り出す。心はすぐに沈んでしまうし楽しく生きたいから、ライブや映画を観に行ったり、好きなものをたらふく食べたり、綺麗な景色を見たりしてなんとか保ってる。そういう行動こそが宇宙だなと思って歌詞を書きました。

10. Dear
弟に向けて作った曲です。去年の夏に帰省した時に弟にビデオ撮影をしてもらいました。その時に奴は段差で足を捻って痛めてしまった訳です。それを僕はずっと知らなくて、相当な爆弾を抱えてしまい病院に通ってる事を年が明けた頃に初めて知りました。「ごめん」とはLINEで伝えたけど、兄弟という間柄だから申し訳ない気持ちとは裏腹に軽い感じで送りました。真面目になるのはなんか恥ずかしいから。そう思った時に、今まで兄弟という関係で笑いに逃げて、どんな想いもちゃんとは伝えた事がないなと感じました。それがこの歌を作るきっかけでした。こういう感謝とか記憶とかありきたりな内容っていうのはそのまま伝え出すとつまらないものになってしまいます。だからシンプルなところはシンプルなうえで、いつもより捻る意識を持ちました。兄弟のみならず誰だって近い存在はいて、近すぎるからちゃんと向き合うのはいちいち恥ずかしくて、なんとなく遠回りしてる所があると思います。血が繋がってる関係ってそういうものです。だから改めてそこに気付いて大切に想えるきっかけの曲になったりすれば嬉しいです。


3rd SINGLE『Post-it
2017年4月19日(水) 発売
SFPL-0001 ¥500

〈収録曲〉
1. 希う
2. Whatever
3. ランナーズハイ
4. remember to forget
5. 9番
6. パブリックメディア
7. 彼方
8. 風船が割れた日
9. 宇宙エレベーター
10. Dear 

〈特典〉
・ボーナストラック収録
・購入者限定ページQRコード
散文詩(全4遍)付き

 

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